バレンタイン

「たとえば片想いの人がいるとして、それでバレンタインにチョコをあげるのってどうなのかな。どうっていうかさ、その人からしてみたら片想いされてるのなんて知らないだろうから、きっとたぶんおどろくんじゃないかな。うん。うれしいとか迷惑とかさ、その前にまずおどろくと思う。それで、チョコあげるほうからしたら、おどろかれるのは本意じゃないっていうか。ただ、好きっていうか、あ、べつにわたしが好きっていうことじゃなくて、まあ、そうじゃないとも言いきれないんだけど、とにかく好意みたいなのが伝わればいいと思ってるわけだから、うん、まあ、わたしのことじゃないんですけど、とりあえず、おどろかれるのはよくない。正常な判断もできなくなるだろうし。だからやっぱりチョコを渡すときはチョコを渡すよっていう感じをあらかじめ出しといたほうがいいよね。うん。わたしもそう思っていた。でもさ、でもさあ! そんなうまくいかなくない!? なんていうか、それでうまくいくんだったら、もっと早くうまくいってるよ!みたいな。あー! だよね! 知ってる! わたし知ってる!」


わたしが「とりあえずあげてみたら?」って言ったら、Iさんは「だよね!」って走っていった。