利尿作用
これは一体どのような心境の変化であろうか。
さっきまで散々文句を言っていたケインの驚くべき変わり様に、私は少しばかりケインを見直すことにした。しかし、悲しいことに、ケインの限界がすぐそこまできていることは誰の目にも明らかであった。
「カンパーイ!」
パーティーが始まってからこれで何回目の乾杯だろう。私はそんなことを考えながら、ケインの様子をうかがうためにゆっくりと彼に近づいた。
「ケインサン、カオガアカイスヨ―。ダイジョブスカー。オチャノムスカー」
ナオミがケインに紙コップのウーロン茶を手渡そうとしている。ケインは驚いたような顔でナオミを見て、そして言った。
「おしっこ行きたくなっちゃうからいらない」
ナオミは泣きそうな顔で笑って
「利尿作用」
とつぶやいた。