アラスカ日記13

(いままでのあらすじ)
アラスカに行くためにお金を貯めていたカレンさんはすんでのところでアラスカ行きを思いとどまるのでした。『アラスカには魔物が住んでいるもの』


あれから3ヶ月。最初はおっかなびっくりマグロを釣っていた船員たちもいまではすっかり慣れ、大荒れの海に裸で飛び込み銛でマグロを獲っています。自分はマグロがあまり好きではないので毎日部屋に閉じこもってインターネットをしていました。ニートという役割です。そのおかげですっかり賢くなった気がしました。船長からはブロガーとして一目置かれる存在になっていました。ただ、ふと寂しくなることもありました。最初は慣れない環境に戸惑っているのだと思っていましたが、どうもそれだけではないような気がしました。いったい何が自分を寂しくさせているのでしょう。

自分に割り当てられた部屋は、船長のはからいで他の部屋から少し離れたところにありました。船員たちは夜になると決まって酒盛りをするのですが、自分は仲間に入れず一人で過ごすことがほとんどでした。ある夜、いつものように寂しくなったので夜風に当たろうと船首に行くと人影が見えました。人影は1人分ではなく、どうやら会話をしているようです。自分はここ数日誰とも喋っていなかったので思い切って仲間に入れてもらおうと思い一歩足を踏み出し声をかけました。すると人影は、やっと声をかけてくれたなと言いました。ワンという鳴き声も聞こえました。人影はおじいさんと犬だったのです。犬は3ヶ月前から気付いていたと言いました。おじいさんは、自分がずっと部屋にいたので避けられているのではないかと思い声をかけられなかったと言いました。どうもおじいさんは自分が漁船デビューをしたのではないかと勘繰っていたようです。自分は突然の再会に驚き、おじいさんと犬を抱いてアラスカの海に飛び込みました。3ヶ月間寂しかった理由がやっとわかった気がしました。そして自分は思い切ってバンドをやりたいと言いました。おじいさんは、すでにドラムセットは購入済みだと言わんばかりに水面をパシャパシャしました。犬はボーカルは絶対に譲れないらしく、しきりにマイクの位置を気にしだしました。自分はやっとバンドが組めた喜びに満ち溢れていました。自分だってローディーだけは譲れません。