Blood is thicker than water(血は水よりも濃い)

「血は水よりも濃い」という慣用句がある。血のつながりの強さを表わす言葉である。それにしても、この慣用句にはいささか納得しかねる。なぜ血と水を比較するのだろうか。水より濃いからといってそれがなんだというのだ。当たり前ではないか。比較されるのが練乳であったなら、私もすんなり納得していたであろう。

この慣用句は西洋の諺"Blood is thicker than water"が和訳されたものであるらしい。では、"water"とは何を指しているのだろうか。いろいろ調べていて以下の文章に辿り着いた。

Alluding to the fact that water evaporates without leaving a mark whereas blood leaves a stain, this proverb was first recorded about 1412.

要約すると、「水は跡を残さずに蒸発するが血は跡を残す、という事実が最初に暗示されたのは1412年である」となる。この記述が事実かどうかは確認する必要があるだろう。しかし、少なくとも私はこの文章の"water"が比喩的な意味で用いられている訳ではないという印象を持った。つまり、"water"とはただの水(H2O)を指していたのだ。

さて、この慣用句は日本的な解釈をすることもできる。ここで使われている「水」を「水臭い」や「水入らず」と同じ意味の「水」と考えるのである。この「水」とは関係の濃いものを薄める存在、転じて身近であるが血縁関係のない他人を表わしている。これが意外としっくりくる。この解釈は、"Blood is thicker than water"に当てはめると間違いであるが、現在日本で用いられている「血は水よりも濃い」においては、あながち間違っているとも言い切れないのではないだろうか。

西洋の諺が日本に伝わり新たな解釈をされる。言葉とは面白いものだ。