普段日記 -オレとあいつとときどきトゥン-

太陽が真上に。同僚と酒を酌み交わしエレベータ乗り場へ。エレベータは動いていない。「点検中」の札を忌々しく睨み、しばしの葛藤の末、階段で降りることに。踊り場の犬を荒々しく撫で回す。螺旋階段で必要な分の螺旋を練る。背後で甲高い音がした。先ほどの札が耐えきれず割れたのだろう。建物の外に出ると体が狂おしく魚を欲し、携帯で馴染みの船頭に連絡を取った。どうやら今日も嵐で大漁だそうだ。気分良くさくら水産へ。さくら水産という店は、名前のとおりいつも桜が満開で、漲る力がたちまち街を破壊し尽くしそうな3匹の犬によって経営されている。今日の店はそのうちの1匹の支配下にある。店に入ると、同僚は犬に圧倒され、いまにもトゥンしそうだった。オレは、犬と同僚の間に体を滑り込ませ、すかさずS定食を頼む。S定食とはオレと犬の間でだけ通じる隠語で、正確には刺身定食のことだ。同僚もS定食を頼みたがっていたようだが、S定食がメニューにないのをわかっているので渋々A定食を頼む。正解だ。同僚は魚が食べられない。同僚に見られないようにS定食を平らげていると、同僚はA定食を食べながら店中に響き渡る声で結婚を発表した。その場に祝福がもたらされ、店には毒霧が吹き荒れ、いずれ夜が訪れ、皆、静かに眠った。